代表挨拶
最新の植物生化学、植物生理学、構造生物学の研究成果から、光合成生物は環境に適応する際にチラコイド膜上の基本分子装置そのものは変えず、特定のタンパク質やその組み合わせを多様化することで、個別の環境に適応した集光やその制御を進化させてきたと推察されます。さらに、これらの環境適応は遺伝子発現やチラコイド膜構造、電子伝達活性の制御を最適化することでより強固なものになったと考えられます。
そこで本領域では、環境に応じてチラコイド膜上で繰り広げられる超分子複合体の形成に着目し、モデル種のみならず非モデル種にも対象を広げ、アミノ酸残基(オングストローム[Å])からチラコイド膜(サブμm)までの空間スケールで、励起エネルギー移動(ピコ秒)から膜構造ダイナミクス(分)までの時間幅に拡張した多階層・多次元の光合成研究を推進し、あらゆる地球環境で光合成を可能とする原理を系統的に解明します。ゲノム情報の蓄積によって様々な生命現象を説明できる時代が到来したように、我々が『ユビキタスな光合成を可能にする超分子構造制御の遍在原理(=ユビキティ)』を解明できれば、超分子構造をキーワードに様々な光合成生物の環境適応を説明できる時代が来る事でしょう。
代表
大阪大学 蛋白質研究所 教授
栗栖 源嗣